ライセンス問題で発火したCodeIgniterとOSL3.0

低い学習コストと圧倒的なスピードを売りにして、このところ人気急上昇だったPHPクレームワークのCodeIgniterが、ライセンス変更問題を巡って大きく揺れています。

事の発端は、今年10月20日にニューヨークで行われたExpressionEngineとCodeIgniterのプレゼンテーションの席で、EllisLabのCEOが、CodeIgniterのライセンスをOpen Software License 3.0に変更すると発表したことから始まります。

その後の詳しい経緯については、次のサイトなどを参照して下さい。

そもそもCodeIgniterは、オープンソースソフトウエアではあったものの、CodeIgniterライセンスという独自ライセンスを採用していました。このライセンスについて、EllisLab側は、BSD/Apacheライクなライセンスだと説明していましたが、CodeIgniterの商標保護や宣伝条項があるため、正式のBSDライセンスやApacheライセンスではありませんでした。

今回のOSL3.0へのライセンスへの変更を決定する前にも、BSDやMITライセンスの採用が検討されたようですが、結局、この商標保護と宣伝条項があるため、最後はOSL3.0に落ち着いたということらしいです。

この辺りの事情は、下記のEllisLabのブログでも詳しく説明されています。

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OSL3.0とはどんなライセンスなのか

EllisLab側の主張では、独自ライセンスからOSL3.0に変更になることにより、CodeIgniterのオープンソースとしてのスタンスが明確になり、コミュニティにとっても有益だということになっています。

OSL3.0は、Lawrence Rosenによって提唱されたオープンソースライセンスで、
Open Source Initiativeによる認証も取得しているのですが、今、コミュニティで懸念されている最大の問題は、GPLライセンスとの互換性です。

次の表は、CodeIgniter License and Terms of Use FAQのなかで使われているもので、OSL3.0と他のオープンソースライセンスとの互換性を示しています。

ライセンス名 互換性は?
Artistic License Yes
Apache-2.0 Yes
BSD 3 Clause Yes
BSD 2 Clause Yes
GPL No
MIT (Expat) Yes
MIT (X-11) Yes
Your custom license Yes

これを見ると一目瞭然ですが、GPLとの互換性だけがNoとなっています。これは、GPLライセンスに基づいて作成されたソフトウエアのソースコードを含む製品には、GPLライセンスの適用が及ぶという条項と、OSL3.0のソフトウエア派生物についての考え方とがぶつかりあってしまうためです。

例えば、EllisLab側は、OSL3.0が採用されているMagentoコミュニティの例をあげて、CodeIgniterのライセンスがOSL3.0に変更されたとしても、CodeIgniterのapplicationフォルダ内に作成したソフトウエアにはOSL3.0の条項は及ばないとしています。これは、OSL3.0が、ソフトウエア本体を改変しない限り派生物とはみなさないという考え方に基づいており、ライブラリの単純なリンクも対象外となります。

これにより、ユーザーが作成したソフトウエアの著作権が守られ、CodeIgniterを使った商用アプリの開発が容易になりますが、その反面、applicationフォルダ内に作成するソフトウエアではGPLのソースコードを利用できなくなる恐れが生じます。先ほどのGPLライセンスの条項とぶつかり合ってしまうわけです。

ポストCodeIgniterの動きはあるか

ここから先は、法律解釈の問題も出てくるので、専門家の意見などを参考にしなければならないかもしれません。

EllisLab側も、最初は懇切丁寧に説明していましたが、最近は徐々に、乱暴(訴訟大国のアメリカと日本では温度差の違いはあると思いますが…)な説明の仕方になり始めていて、現行のCodeIgniterライセンスも元々GPLライセンスとは互換性がなかったとまで主張し始めています。

これに対して、日本CodeIgniterユーザ会ではCodeIgniterのライセンスがOSLに変更されることに関する投票などが呼びかけられており、こうした動きが世界的に広がるかもしれません。ただ、EllisLab側は、法的に問題はないとして、顧問弁護士と二人三脚で強引に事を進めてしまう可能性は高いでしょう。

個人的には、CodeIgniterベースのIonizeという多言語対応CMSが、MITライセンスで配布されていることを確認して今はひと安心しましたが、まだまだ予断をゆさない状況が続きます。

できることなら、コミュニティとの良好な関係を維持した上で、ライセンス変更を行ってもらいたいと願っていますが、現実的にライセンスの変更が行われれば、CodeInginterの使用を止めるかGPLライセンスで提供されるソフトウエアの使用を止めるかという二者択一を迫られる人が出て来る可能性は高いです。

そんななか、ポストCodeIgniterの候補として、次のふたつのフレームワークが少し話題になり始めています。

上記のいずれもがCodeIgniterから派生したプロジェクトで、KohanaがBSDライセンス、FuelPHPがMITライセンスで配布されています。ただし、どちらも現時点では、発展途上という印象が強く、GPLライセンスとの問題でCodeIgniterを利用できなくなるユーザーがこちらに移行するかどうかは未知数です。

【追 記 】20150515
2014年、CodeIgniterは、EllisLabからカナダのブリティッシュ・コロンビア工科大学(British Columbia Institute of Technology)に売却され、問題のCodeIgniter3.0はMITライセンスによってリリースされました。

これで、大多数のCodeIgniterユーザーの懸念は払拭されたわけですが、今回の問題で、オープンソースのライセンスについて、いろいろなことを考えさせられました。OSL3.0については、提唱者のLawrence Rosen自らが解説するサイトもありますので、これらを参考にして、オープンソースにおける著作権の問題など、じっくり検証してみることも大事なことかもしれません。

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